人の声がしない空間こそが、最高のおもてなし。今どき貴重な「無言カフェ」。

さまざまな業態に浸透している“おひとり様”文化。最近、そのコンセプトを究極に特化させたカフェが注目を集め、口コミなどで話題となっています。

おしゃべり厳禁の「無言カフェ」です。

東京・高円寺にある「アール座読書館」。入口には『お願い 店内は読書室となっております。大変恐縮ですが、お話目的の方はご遠慮ください』の看板が出迎えます。客同士の会話は終日禁じられていて、連れと話す時のための“筆談帳”が用意されています。扉を開けると、そこはジブリ映画の中に入り込んだかのような空間が広がります。たくさんの生い茂った木々、趣向を凝らした家具や小物。テーブルも椅子もアンティークな感じで、聞こえてくるのは水槽のチョロチョロという水の音と静かに流れるピアノのBGM。照明も二つとして同じものはありません。席は独立していて客同士が顔を合わせないレイアウトで、席によって趣きが異なります。目の前に大きな水槽のあるソファ席、SLのような仕切られたボックス席、小学校の教室のような学習机の席など。空いていれば、途中で席の移動もできます。書棚には約1,000冊の本が並び、自由に読むことができます。こんな希少な時間と空間を提供してくれるので、さぞ強気な価格設定かと思いきや、これが650円(コーヒー・紅茶)という良心プライス。

金曜と土曜の午後6時半~10時の時間帯だけ、おしゃべり禁止の“静(しず)カフェ”に変身するのが、神戸・三宮の「カフェケシパール」。店内に聞こえるのは、かすかに流れる音楽、コーヒー豆を挽く音、時を刻む時計の音……9割がひとり客で、7割近くが20~30代の女性。1時間半~2時間が平均滞在時間とか。

東京・千駄木の「結構人ミルクホール」は、おしゃべり禁止に加え、2人以上での来店や強い香水をつけた人もお断りという徹底ぶり。古民家風の造りの店内には、『他のおひとり様が少しでも不快に思われる行為は全て禁止です』と店主からの“ルール”が掲げられています。コーヒー1杯800円が、2杯目からは“おかわり価格”で200円に。ちなみに店名の「結構人」とは、好人物、つまりお人好しといった意味の古い言葉だそうです。

幅広い世代の“ひとりになりたい”人たちを引きつける「無言カフェ」の魅力。各店に共通しているのは、都会にありながら図書館より静かで、おしゃべり厳禁とはいえ、かしこまったり威圧感などとは無縁の、実に和める居心地の良い空間であるという点です。静かを楽しむ—–それが「無言カフェ」の正しい過ごし方のようです。